簿記1級の情報って2級までと比べると少ないですよね?難しいし、勉強方法もよくわからないし。
この記事では、税理士合格者が簿記1級にチャレンジしたときの体験談を踏まえて、どんな人にオススメするのか・どんな勉強方法をオススメするのか、をお伝えします!
「税理士には既に合格していたの?」そう。商業簿記には対応しやすかった
簿記1級にチャレンジしたときの状況を正直にお伝えしますね。
このとき、既に税理士試験には合格していました。
税理士試験は簿記論・財務諸表論という科目があって、商業簿記の計算・理論を扱います。つまり、簿記1級の商業簿記レベルには概ね達していました。
また、会計士試験の勉強中でもあったので、税理士試験では不足しがちな連結会計は補っていましたし、簿記1級の工業簿記レベルにも概ね達していました。
「最初から合格レベルにあったなら、記事の価値はあるの?」と疑問に持たれたかもしれません。
もっともな疑問ですが、実際に簿記1級を受験して、その難しさを十分に理解しています。
また、他の資格受験の経験も踏まえてコメントしますので、部分的にも刺さる部分があれば良いかなと思って、記事を書かせて頂きました。
「簿記1級も勉強した方がいい?」正直、多くの人には不要かも。。
「簿記2級に合格したから、続けて1級も勉強しようかな?」そう思う人、多いと思います。
でも、正直、あまり一般にはオススメしません。身も蓋もないですね。ごめんなさい。
全面的にオススメできない理由は簡単です。難しいから。コスパ悪いから。
もちろん1級が評価される環境であれば、ぜひチャレンジしてください。例えば、合格することで手当が出たり、昇格が見込めたり、転職を見据えていたり、という人。
他には、クスノキが受験したみたいに、会計士受験生が自信を付けたり、頑張った証明を残すためだったり。
この記事では、難しいとわかっていて、あえてチャレンジする人に向けて記事を書いています。
「独学で十分?」難しいから、素直に予備校を頼った方が無難だよ!
それでは、どうやって勉強すればいいでしょう?
全く無知状態から3級スタートしたとして、3級はYouTube、2級はテキストそれぞれメインでいける、つまり、(今の時代なら)2級まで予備校は必要ないというのが、クスノキのスタンスです。
でも、1級は違います。3級・2級とは範囲も難易度も異なります。少なくとも半年程度は見据えておく必要があります。
2級まではYouTubeなどで、無料あるいは安価に有益な情報が提供されています。これが1級になると控えめに。
有名どころで無料なものはなく、安価なスタディングでも6万円以上(ただし、2023.4現在、CPAラーニングで無料公開されつつある)。
時間がそれなりに確保できて、自分を律することに長けている人であれば、スタディング・CPAラーニングもオススメできます。
けど、1級は長丁場の勉強で、自分を律し続けることは普通、難しい。素直に予備校の通学講座を利用した方が良いと思います。
難関資格とされる税理士・会計士・診断士で短期合格する人の多くが予備校を使うように、簿記1級も同じととらえた方がいいでしょう。
カリキュラムに食らいつくことさえできれば、合格可能性は格段に高まります。
「勉強方法は2級以前と同じ?」インプットも大事にして!
勉強方法はアウトプット重視を勧める人が多いので、これを読んでいる方もアウトプット重視で2級は取得されたかもしれません。
実際に簿記の勉強ではアウトプットは大切です。それはクスノキも認めます。
でも。
まずはインプットありきです。インプットこそが大事です。
1級にもなると、商業簿記も工業簿記も、理屈がわかっていないと、点数はのびません。体系的なインプットがあってこそ、その後の理解が早まり、深まるわけです。
一方でアウトプットも重要です。
クスノキは色々な資格試験に合格してますが、その中にはアウトプットを全然やらずに合格したものも多くあります。宅建、FP3級・2級、診断士1次(経済学、財務・会計を除く)など。
でも、簿記は違う。アウトプット「も」重要です。要はインプットとのバランスですね。
アウトプットをやって初めて、インプットの重要な論点がわかります。そして、その論点をしっかりとインプットする。
つまり、(インプット大事と言ったけど、最初の)インプットを軽くやったら、すぐにアウトプット。気付いた論点を精緻にインプット。またアウトプットをやり直す。この流れが大事です。
そのうち、アウトプットだけをやって、ときどき気になった箇所だけテキストを見直す、で十分になるはずですから。
「どんな勉強したの?」会計士のベースがあったから参考外。補足します
どんな勉強をしたのか、お答えします。
冒頭にお伝えした通り、会計士の勉強中の状況ですので、参考にならない部分も多いかもしれません。
ですが、少しでも刺さる部分があれば。
商業簿記
商業簿記は、連結会計を除く部分は税理士で概ね勉強できていて、連結だけは会計士で補充しました。だから、簿記1級のテキストは購入したものの、参照した程度です。
これでは余りに参考にならないので、税理士の勉強方法を簡単に。
税理士は通学講座で、とにかく週2回の授業に食らいついていくことだけ意識していました。
あとは忘却との闘い。すぐ復習することを心がけていました。
夜の講義を受けて、帰宅してテキストを見る(寝落ちもしばしば)。翌日の朝にも見直して、次回の講義の前に少しだけでも問題集を解いていました。
問題集を解く時間を確保できない場合でも、テキストの解法を見て、完全には忘却しないように心がけていましたね。
そして、土日にがっつり復習。
工業簿記
工業簿記は、実際に簿記1級の教材を利用しました。
と言うのも、会計士の管理会計の動画を見て、簿記1級のテキストでインプット・問題集でアウトプットしたからです。
簿記のテキストを利用したのは、個人的に会計士のテキストよりわかりやすく感じたから。
工業簿記のテキストには、ひたすら書き込みました。ボックス図に解いていく過程を書き込んで、パッと見するだけでも解法がわかるような工夫はしました。
テキストを細部まで見れば解法もわかりますが、自分なりにボックス図に書き込んだ方が、後日の復習が簡単になります。
また、タックスシールドは意外と苦手な人も多いのかもしれません。診断士のときに、周りを見て、そう感じました。貨幣の時間価値もそうでしたけど。
これも図や仕訳に書き足して、テキストに自分なりの工夫を施していましたね。つまり、復習の時短を意識していた感じです。
他では、2級にも言えることですが、何の原価計算をしているのか、論点がごちゃまぜになって工業簿記が苦手になる方が多い印象です。論点を俯瞰することに気を付けていました。
「今オススメの勉強方法は?」今も予備校の通学・通信がオススメ!
さて、今、改めて1級を勉強するとしたら。
前述した通りですが、カリキュラムを順守することが合格への最短だと思います。
カリキュラム順守が容易な方法となると、予備校の通学が一番のオススメですね。
とは言え、近隣に通学できない方もいるでしょう。
その場合は、通信または独学によらざるを得ません。予備校の通信でない場合でも、スタディングとかCPAラーニングの動画の視聴は心掛けましょう。
あまりに安価な方法で、テキスト+問題集だけに頼ると、適切に理解することに時間を浪費して、合格が遠回りになってしまいますから。
逆に言えば、短期の試験合格が目的でない場合には、地道にテキスト+問題集、昔ながらの独学の手法でも問題ないかと思います。それでもテキスト選びには気を付けてくださいね。
予備校
それなりに大手の予備校を選択すれば十分と思います。TAC、大原、LECなら、まず問題ないでしょう(「それなり」じゃなくて十分に大手ですけど)
税理士・会計士になると、合格者を最大手の数社で占有している状況ですので、その中で選択することが無難です。
他の大手でも合格レベルには達するでしょうけど、最大手の数社の場合、自分のレベルを把握しやすいですし、予備校に論点漏れがあっても問題にならない(皆が解けないので、合否に影響しない)ですし。
簿記1級の場合、合格者を占有している予備校ってありませんよね?
だから、それなりの大手の中から、通学しやすいとか、見学した先生と相性よさそうとか、自習室が充実しているとか、複数の要素を吟味して決定してもらえば良いでしょう。
テキスト・問題集
テキスト・問題集のオススメは3級・2級と同じです。
個人的なオススメは、TAC出版「よくわかる簿記シリーズ」の合格テキスト・合格トレーニング。
クスノキ自身が使っていたこともあるけど、TACが授業で実際に使っている教材だから、安心感は十分です。他の教材を買い足すか悩む必要がないのも大きい。
とは言え、個人の好みもありますから、アマゾンのレビュー見るとか、書店で見るとか、で確認をお願いします。書店で確認した人は、書店で買ってあげてね。
ちなみに、他に購入したことがあるのは、同じTAC出版「みんなが欲しかったシリーズ」の簿記1級。
これも良い教材だけど、合格後に何年も経って復習に使ったから、受験時の教材としては「よくわかる簿記シリーズ」が間違いなくオススメできるかなと。
過去問
2級までと違って、1級は今も過去問が発売されているんですね。
であれば、過去問題集を購入しましょう。すべてを解く必要はないかもしれませんが、5回分くらいは解いた方がいいでしょう。論点が被り過ぎた場合は他の問題も選択して。
また、予備校利用の人は、予備校が準備する模擬試験だけで十分と思いますよ。あまり、過去問・模擬試験をやり過ぎるより、テキスト・問題集の基本を確実にした方が合格への早道です。
YouTube(動画)
YouTubeで網羅的に扱っているものはない認識です、1級は。
無料で有益そうなものとなると、CPAラーニング一択でしょうね(2023.4時点で、無料公開されつつある)。
会計士大手の予備校なので、質・量とも十分なものが提供されるものと期待できます(クスノキ自身は視聴していません。推測でゴメンナサイ)。
YouTubeでなくて有料にはなるけど、一般的な大手と比べると安価なスタディングを検討してもいいかも。税理士(復習)や社労士の講座を取りましたけど、十分な内容でしたし。
【補足】オススメ勉強法【簿記1級】
勉強法について補足します。
上記の通り、クスノキのオススメは以下のセットのいずれか。お金を出せて、通学できるなら、前者推し。
- 大手予備校の通学・通信講座「のみ」
- CPAラーニング または スタディング
- (必要に応じて)TAC 合格テキスト・トレーニング
- (必要に応じて)大手の過去問題集
ただ、懸念するところも。
- 料金を十分に考慮していない
- 勉強場所を考慮していない
- 紙媒体を推している(持ち運びしにくい)
それぞれ少し補足しますね。
料金を十分に考慮していない
大手予備校の料金って、ご存知でしょうか?
2023.4現在、以下の料金。いずれもWeb通信、2023.11目標。
- TAC 165,000円(合格本科生)、141,000円(講義パック)
- 大原 146,500円(合格コース)、91,000円(商簿・会計基本講義)、66,800円(工簿・原計基本講義)
一方で、スタディングは、69,600円(2023.4現在は早割で,66,600円)。CPAラーニングに至っては、無料。
CPAは特別すぎるとして、やっぱり大手予備校は高いですよね。
簿記1級は難関・長期なので、カリキュラムを順守するためにも本来は通学を選んで欲しいところ。
でも、現実的に大手は高い。次に考慮する「勉強場所」も踏まえて検討しましょう。
勉強場所を考慮していない
みなさんは勉強場所を確保できていますか?
自宅で勉強できる人は問題ないですね。それ以外の人はどうでしょう?
電卓を使える場所は限られているかもしれません。
いくつか候補を考えましょう。
自宅以外だと、学校、職場、公共の図書館、あたりでしょうか。
クスノキは学生時代、公共の図書館を利用したことがありませんでした。当たり外れもありますけど、最寄りにあるなら使えそうか確認しましょう!
他だと、カフェ、ファーストフード、ネットカフェ。コワーキングスペースも対象かもしれない(意外と安い)。
また、予備校が近場(自宅・学校・職場)にあるのなら、予備校を検討してもいいでしょう。
なぜか?理由は予備校の自習室を使えるから。通信講座でも自習室を使えるのが普通。
1級の難易度を考えると、勉強する場所の確保は不可欠です。長期間(8か月~10か月程度)をカフェやコワーキングスペースに費やせば、かなりの金額となるでしょう。
それを踏まえると、近場に予備校があるのなら、予備校の方が割安になるかもしれません。
なお、自習室を使うことが目的なのだから、自習室を使えそうなのか、予備校に電話などで確認してみましょう!
紙媒体を推している(持ち運びしにくい)
みなさんは紙媒体のテキストを用いるのが好みですか?それとも電子媒体の方ですか?
簿記の場合、電卓を使った演習があるので、紙媒体の方がいいと個人的には思います。でも、人の好みはそれぞれですよね。
どうしても電子媒体で済ませたい場合、
必然的に、CPAラーニングか、スタディングか。前者は無料提供が進行中(2023.4現在)のため、後者を紹介しますね。
スタディング
クスノキは、税理士(復習)、社労士(受験)のために利用しました。
内容は充実しています。「料金の割に」ではなく、大手予備校に遜色ないレベル(特に、社労士は同等以上かも)。
簿記は受講したことがありませんが、無料でお試しできるので、確認してはいかがでしょう?
前述の通り、料金は、66,600円。大手予備校と比べるとかなり安い。これでテキストやら問題集やら一通りが揃うので。そもそもCPAラーニング無料が異常ですからね。
また、「学習効率がアップする画期的学習システム」として、いろいろと機能が提供されています。
クスノキが使っていたのは、「マイノート機能」。
これを使うと、webテキストの必要な個所だけを簡単にコピペして、自分だけのオリジナルノートが作成できる優れモノ。
webテキストをまるっとコピペして、それに編集しまくったオリジナルテキストにしてもいいし(pdf印刷したものをペンで加工するもよし)。
CPAラーニングは母体がCPA会計学院(会計士予備校の大手)。他の大手と同様に、本来は紙ベースの教材に強い。
その点、通信特化している分、通信教材の利便性に優れているのが、スタディングの強みと言えるでしょう。
まとめ(【補足】オススメ勉強法【簿記1級】)
ここまでを踏まえると、概ね以下のような感じでしょうか。「お金は出せる」には、勉強場所のコストも考慮してくださいね。
【教材の媒体にこだわらない】
- どうしても合格したい+お金は出せる+通学できる(通学できるけど、あえて通信にする)、の場合
大手予備校(通学)(通信) - どうしても合格したい+お金は出せる+通学できない、の場合
大手予備校(通信) - どうしても合格したい+お金は節約したい、の場合
スタディング(必要に応じて、TAC市販教材を足す) または
CPAラーニング + TACテキスト・問題集 + 大手過去問 - 一通り勉強したい、の場合
スタディング または CPAラーニング
【電子媒体の教材に原則こだわる】
- どうしても合格したい、の場合
スタディング(必要に応じて、TAC市販教材を足す) または
CPAラーニング + TACテキスト・問題集 + 大手過去問 - 一通り勉強したい、の場合
スタディング または CPAラーニング
あくまでも目安であること、ご承知おきください!
「簿記1級の次は何を勉強する?」FPを勉強していないなら、ぜひFPを!
ここまで簿記1級について記しました。
簿記1級の次は何を学習しましょう?
冒頭にお話した通り、簿記1級への道と、会計士・税理士への道は、別物と認識しています。(簿記1級を評価してもらえる)社会人は簿記1級、就職組は会計士・税理士。
もちろん、社会人の中にも簿記1級を勉強しているうちに、会計士・税理士への道を志す方もいらっしゃるでしょう。
その場合は会計士・税理士を志すのもいいでしょう。会計士・税理士の記事も書いているので、ご参照いただけると幸いです。
では、普通(会計士とかは目指さない)の人はどうでしょう?
簿記3級・2級でも書いていますが、FPをオススメしたい!
FPは簿記より更に多くの人に役立つ勉強だと思っています。FPの記事も参照して頂けると幸いです。
おまけ。電卓はブラインドタッチできるように!
電卓のことは3級・2級でも書いたけど、1級に関して補足しますね。
2級のときに使った電卓。12桁であれば、そのまま1級で使ってOKです、きっと。
もし、2級のとき、電卓のマニュアルなんて見たことがない・機能を全然使ってない方は、マニュアルを見て、どんな機能があるのか知りましょう。
あと、1級であれば、ブラインドタッチできた方がいいと思います。全てのキーをタッチできる必要はないければ、数字キーの部分だけは。
周りが皆できると、焦っちゃうでしょうし。
細かいことだと、右手打ち・左手打ちにこだわる必要もありません。
クスノキは右利きの右打ち。会計士は左打ちが多い(今はちがうかも。)ですが、会計士に右打ちでも合格してますから。
まとめ(簿記2級とったけど1級もやるべき?オススメできる人と勉強方法を紹介)
簿記1級について、資格マニアなりの記事にまとめてみました。
簿記1級は2級までと大きく違って、オススメできる人が限られる、難易度の高い資格です。
その中で目指すということは、1級の価値を認めてくれる環境に身を置いているものかと。
せっかく目指すのであれば、予備校などを有効に活用しましょう。初期投資はかかるけど、さっさと合格すれば、早めに資金を回収できるでしょうから。
興味が湧いた方は、是非とも簿記1級にチャレンジしてみてください!
そのときの勉強方法に、この記事が少しでも役立ってもらえると幸いです。